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2014年05月27日 前へ 前へ次へ 次へ

日本化学会新会長に聞く 榊原定征東レ会長 

革新に挑み、世界トップの力を

 26日付で日本化学会の会長に就任した榊原定征氏(東レ会長)。国内最大規模を誇る学会の会長としての抱負や、環境など地球規模の課題を解決するうえで化学が果たす役割などを聞いた。
     ◇ ◇ ◇
 ―現在の所感を。
 「日本化学会は国内の学会の中で最も歴史が長く規模も大きい。明治期以降、国内経済・社会の発展を引っ張ってきた存在でもある。大学と大学院で化学を専攻し化学企業に入社した私には『ケミストリーのDNA』が染みついている。会長就任は非常に名誉で、責任の重さも感じている」

論文引用横ばい
気を引き締めて
 ―日本の化学アカデミアの力をどうみますか。
 「世界的にみても日本が最も強い分野だと考えている。ノーベル化学賞受賞者も2000年代で6人と米国に次いで多い。一方で課題もある。日本の化学論文数はここ10年伸び悩んでおり、論文の質の目安となる引用件数も横ばい。化学会として気を引き締めなければならない状況だ」
 ―企業の研究開発のあるべき姿とは。
 「日本は年間32兆〜33兆円分の資源や食糧を輸入しており、それに必要な外貨の90%を稼ぎ出す製造業こそが国の基幹であるといえる。私は政府産業競争力会議の民間議員として製造業の国際競争力強化を訴えてきた。競争力の源泉はイノベーション。これを政策で支えることが日本の発展につながる」
 「東レのグローバル競争力を支えるのはポリエステルフィルムなど約30の世界ナンバー1事業と、5〜6つのオンリー1事業だ。例えば炭素繊維は規模もトップだが、海外企業が追いつけない圧倒的な技術格差がある。炭素繊維の研究開発期間は約40年におよぶが、『必ず21世紀の基幹材料になる』という研究者の情熱と、歴代社長の信念・忍耐があっていまの姿がある。時間をかけても本質的・革新的な研究にチャレンジするのが日本の本来の姿ではないか」

国際化や学術誌、水準など課題
 ―就任後に取り組まれるテーマは。
 「玉尾皓平前会長が掲げた『化学が先導する持続社会』が化学会とケミストの基本理念。これをしっかり引き継ぎたい。そのほか重要なキーワードは『グローバル化』と『イノベーションの力で世界トップを目指す』の2つ。具体的な課題としては1化学会の国際化推進2化学会学術誌の水準向上3課題解決型の産学官連携の推進4化学普及活動の強化5世界各国の化学会との連携強化6化学会の組織基盤強化-の6つがある」
 「とくに国際化、学術誌の水準向上、産学連携が重要だろう。日本化学会の学術誌は米国やドイツの学会誌に比べると認知度は高くない。現在のインパクトファクター(引用件数の多さを示す指標)は約1・5。これを3程度に高めたい」
 「化学会の年会は、国際水準の学術発表を増やすためにも早期に100%英語化を実現したい。海外の研究者や留学生も参加できるようになる。これについては多くの先生方にご支持頂いている」

政策提言や社会、への発信も大事
 ―21世紀的課題の解決に向け化学会の役割はますます大きくなります。
 「環境や水、資源に関するグローバルな課題は、高度な科学があってこそ解決できる。なかでも化学が果たす役割は大きい。先般開催された化学会の総会では、社会や政治に対しどういう役割を果たすべきか活発な議論が交わされた。研究活動はもちろん大事だが、政策提言や社会に対するメッセージ発信も大事。今後よく議論していきたい」
(中村幸岳)


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