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【連載(上)】 バイオプラスチック最前線
「シェールガス」起爆剤に
ケタ違いの使用量
市場拡大が期待されながら、数年間にわたり足踏み状態のバイオプラスチック。ポリマー改質や他樹脂とのアロイ、成形加工技術を駆使して食品容器、OA機器などの耐久材、自動車の内装材など用途は拡大しているものの、コストと物性の両面で石油系樹脂を代替するまでにはいたっていない。しかし、生分解性や石油系樹脂にはない高機能性によって再び大きな注目を集めるようになった。バイオプラスチックの最前線を追った。
※求められる生分解※ シェールガス・オイル、石油の採掘用途で需要が高まっているのが生分解性樹脂。採掘にはさまざまな化学物質が使用されており、水に強酸などの化学物質を入れて油層を溶解させているため、地中に化学物質が堆積し地下水に漏れ出すことや、使用した水の回収や処理・運搬コストがかさむといった課題がある。採掘企業は水と二酸化炭素に分解する生分解性樹脂を使用することによって、環境に配慮するとともにコスト低減を進めようとしている。
※採掘の支持材向け※
これらの採掘には「水圧破砕法」が用いられている。水圧破砕法は流体を高圧加圧することで貯留岩を人工的に破壊する技術。油層に亀裂を生じさせて、石油やガスの通り道をつくる。採掘量を増やすため水平に10〜40の複数層の亀裂を生じさせ、何段階も破砕を行い割れ目を増やしている。このとき、亀裂が自然に閉じることを防ぐため「プロッパント」と呼ぶ支持材を注入する。
油田サービスの世界最大手である米シュルンベルジェは、このプロッパントにバイオプラスチックのなかで最も量産が進むネイチャーワークスのポリ乳酸(PLA)を使用している。PLAを長さ3〜4ミリメートルの繊維状にすることで、石油の流れ方が早くなり効率的な採掘ができる。
※地熱の温度に対応※
ただ、PLAは100度C以上でないと分解が進みづらい。このため、より地熱の温度に近い40〜50度Cの中低温で分解するクレハのポリグリコール酸(PGA)や、三菱化学の脂肪族ポリエステル系樹脂「GS Pla(ジーエスプラ)」に対する引き合いが強まっている。現状、ジーエスプラは石油由来だが、三菱化学は原料となるコハク酸、1・4ブタンジオール(BDO)を植物由来に切り替えるための研究開発を進めている。
クレハのPGAはスーパーエンジニアリングプラスチックのポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂と同等の強度を持つため、採掘の際のさまざまな器具にも使用が検討されているという。米ウエストバージニア州に年産4000トンのプラントを構え本格生産を開始したばかりだが、3〜4年後にはフル稼働になる見通し。
こうした採掘用途に使用される場合には「これまでとはまったくケタが違う」(クレハ)ほどの使用量になるという。シュルンベルジェのPLAの使用量は年4000トン程度ともいわれ、今後もさらに拡大するとみられる。生分解性といういわば原点ともいえる特徴がバイオプラ市場の起爆剤になろうとしている。 -続く- (佐々木綾奈)
【写真説明】 クレハは米国でPGAの本格生産を開始した(ウエストバージニア州の年産4000トンプラント